中国国家知識産権局は、2025 年11 ⽉に「専利審査指南」の改正を公布し、2026 年1 ⽉1⽇より新しい審査基準が施⾏されます。
本改正は、AI・ビットストリーム・植物関連など新領域の技術への対応強化や、特許審査品質の向上を⽬的としています。
実務に関係する主要ポイントは以下の通りです。
■ 1. 「⼀案⼆出願」(特実同⽇出願)の取り扱いが⼤きく変更
従来は、発明と実⽤新案を同⽇に出願する「⼀案⼆出願」が認められ、発明側の請求項補正によりダブルパテントを回避することができましたが、改正後はこの回避⽅法が認められなくなりました。
改正後のポイントは次のとおりです。
・発明を登録するためには、実⽤新案権の放棄が必須
・請求項補正による重複解消は不可
今後は、出願段階で「発明」か「実⽤新案」かを明確に選択することが推奨されています。
■ 2. AI 関連発明の審査基準が強化
AI 技術に関する審査基準が整備され、以下の内容が明確化されました。
●法律・社会道徳に反する AI 発明は特許不可
例:
・顔データを⽤いて顧客情報を取得し、精密マーケティングを⾏う⽅法
・⾃動運転⾞が歩⾏者の性別・年齢により回避判断を⾏う⽅法
●AI 発明の「⼗分な開⽰」が必須
以下の事項を明細書に明確に記載する必要があります。
・モデルのモジュール構成・階層・接続関係
・トレーニング⼯程やパラメータ
・特定の分野・シーンでのモデル/アルゴリズムの適⽤⽅法や⼊⼒・出⼒データの設定
■ 3. 進歩性判断がより厳格に
審査官は、技術課題の解決に寄与しない特徴は、請求項に記載されていても進歩性には寄与しないという基準を明確に適⽤できるようになりました。
進歩性反論では、追加した特徴が「技術課題とどのように関連するか」を丁寧に説明する必要があります。
■ 4. ビットストリーム関連技術の新しい審査枠組み
ビットストリーム「単体」は特許対象外ですが、以下は特許対象となる可能性があります。
・技術案に基づくエンコード⽅法で限定された記憶・伝送⽅法
・当該ビットストリームを記憶する媒体
■ 5. 発明者は「⾃然⼈」に限定
・AI や組織は発明者になれません。
・中国籍の場合、発明者全員の⾝分証番号の記載が必要となります。(第 1 発明者以外も対象)
■ 6. 無効審判の濫⽤防⽌
・「請求⼈の真実の意思でない」無効請求は受理されません。
・「⼀事不再理」原則が強化され、実質的に同⼀の理由・証拠による再請求が排除されます。
■ 7. PTA(特許期間補償)の取り扱い変更
不服審判で拒絶が取り消された場合でも、新しい理由・証拠による取り消しかつ明細書の修正がない場合は、PTA(期間補償)の対象外となります。
■ その他
・植物関連発明の扱い整理
⾃然界で発⾒された天然の野⽣植物は特許対象外ですが、⼈⼯選抜・改良を経て産業上の利⽤価値を持つ植物については特許保護が認められる場合があります。
・配列リストの提出に関する負担軽減
所定形式(コンピュータ可読形式)で提出する配列リストは、説明書追加料⾦に係るページ数としてカウントされません。
■ まとめ
今回の改正は、出願戦略や明細書作成⽅針に影響し得る内容が多く含まれています。
特に、
・特実同⽇出願の制限
・AI 系発明の開⽰要件の強化
・進歩性判断の厳格化
などは実務に⼀定の影響が⽣じる可能性があるため、中国への出願を検討される際には、個別案件に応じた慎重な検討が必要となります。
参照:中国国家知識産権局(CNIPA)
《关于修改〈专利审查指南〉的决定(局令84号)》(2025年11月13日公示)
https://www.cnipa.gov.cn/art/2025/11/13/art_526_202559.html